前回の記事では、系統用蓄電池が「卸電力市場(JEPX)」で価格差を利用して利益を得る仕組みをご紹介しました。
しかし、近年の系統用蓄電池ビジネスでは、卸電力市場だけで収益を上げる時代ではなくなっています。
そこで重要な役割を果たしているのが**「需給調整市場」**です。
実は現在、多くのアグリゲーターは卸電力市場よりも、この需給調整市場を重視して運用しています。
この記事では、需給調整市場の仕組みや、なぜ系統用蓄電池の安定収益につながるのかを分かりやすく解説します。
需給調整市場とは?
需給調整市場とは、
電力の需要(使う量)と供給(発電する量)のバランスを維持するための市場です。
電気は大量に貯めておくことが難しいため、
「発電量=消費量」
を常に保たなければなりません。
もしこのバランスが崩れると、
- 周波数の乱れ
- 停電
- 電力設備への負荷
など、電力系統全体に影響が及ぶ可能性があります。
そこで、必要なときにすぐ電気を供給したり、逆に消費を抑えたりできる設備を確保するために作られたのが需給調整市場です。
需給調整市場は「電気を売る市場」ではない
ここが卸電力市場との大きな違いです。
卸電力市場では、
電気そのものを売買します。
一方、需給調整市場では、
「必要なときにすぐ充放電できる能力(調整力)」
を提供することに価値があります。
つまり、
「いつでも充放電できます。」
という待機状態にも報酬が支払われます。
系統用蓄電池が活躍する理由
例えば、
真夏の夕方。
突然エアコン需要が増えたとします。
発電所だけでは間に合わない場合、
系統用蓄電池が数秒以内に放電を開始します。
すると、
電力不足を防ぐことができます。
逆に、
電気が余っている場合には、
蓄電池が充電することで電力を吸収します。
このように、
需給バランスを調整する役割
を担っています。
需給調整市場のイメージ
需要が急増
↓
一般の発電所だけでは不足
↓
アグリゲーターへ指令
↓
系統用蓄電池が数秒で放電
↓
電力不足を防ぐ
↓
報酬を受け取る
まさに、
電力系統の「バックアップ部隊」のような存在です。
なぜ蓄電池が有利なの?
火力発電所は、
発電を開始するまで時間がかかります。
しかし蓄電池なら、
数秒以内
で放電できます。
このスピードが非常に高く評価されています。
そのため、
再生可能エネルギーが増えている現在、
蓄電池の需要が急速に高まっています。
調整力には種類がある
需給調整市場では、
必要なスピードによって商品が分かれています。
例えば、
- 一次調整力
- 二次調整力①
- 二次調整力②
- 三次調整力①
- 三次調整力②
それぞれ、
応答速度や継続時間が異なります。
一次調整力
数秒以内に応答。
最も速い対応が求められます。
二次調整力
数十秒〜数分程度で対応。
需要変動を補います。
三次調整力
数十分〜数時間単位で対応。
長時間の電力不足を補います。
アグリゲーターが重要になる理由
個人が需給調整市場へ参加することは現実的ではありません。
そこで、
アグリゲーターが全国の蓄電池をまとめ、
一つの巨大な蓄電池として市場へ参加します。
例えば、
蓄電池A 50kW
蓄電池B 50kW
蓄電池C 50kW
蓄電池D 50kW
↓
アグリゲーター
↓
200kWの調整力として市場へ参加
この仕組みが、
「アグリゲーション」
です。
卸電力市場との違い
| 項目 | 卸電力市場 | 需給調整市場 |
|---|---|---|
| 売るもの | 電気 | 調整力(充放電能力) |
| 収益 | 電気の価格差 | 調整力への報酬 |
| 価格変動 | 大きい | 比較的安定しやすい |
| 主な目的 | 売買 | 電力系統の安定化 |
つまり、
卸電力市場は「安く買って高く売る」市場、
需給調整市場は「いつでも対応できる能力」を提供する市場と言えます。
需給調整市場のメリット
① 比較的安定した収益が期待できる
価格差だけに依存しないため、
収益が安定しやすいと言われています。
② 蓄電池との相性が非常に良い
瞬時に充放電できるため、
蓄電池の強みを最大限に活かせます。
③ 再生可能エネルギーの普及で需要が増加
太陽光や風力発電は天候によって発電量が変動します。
その変動を補うため、
需給調整市場の重要性は今後さらに高まると考えられています。
注意点
需給調整市場は魅力的ですが、
収益が保証されるわけではありません。
市場制度の変更や報酬水準の見直し、競争の激化によって収益性が変わる可能性があります。
また、参加するためには蓄電池の性能や通信設備など、一定の技術要件を満たす必要があります。
そのため、運用実績のあるアグリゲーターやEPC会社を選ぶことが重要です。
FIT終了後の太陽光オーナーにもチャンス
FIT制度が終了すると、
固定価格で売電する時代から、
市場価格を活用して収益を上げる時代へ変わります。
その中でも、
需給調整市場は、
系統用蓄電池の価値を最大限に発揮できる市場として注目されています。
卸電力市場だけに依存するのではなく、
需給調整市場や容量市場を組み合わせた運用によって、
収益の安定化を目指す事業者が増えています。
まとめ
需給調整市場は、電気そのものを売買する市場ではなく、電力の需給バランスを維持するための「調整力」を取引する市場です。
系統用蓄電池は、数秒以内に充放電できるという特性から、この市場で非常に高い価値を持っています。
今後、再生可能エネルギーの導入が進むほど、需給調整市場の重要性はさらに高まるでしょう。
系統用蓄電池への投資を検討する際は、設備価格だけでなく、
- どの市場で運用するのか
- どのアグリゲーターが運用するのか
- 需給調整市場への参加実績があるのか
といった点も確認することが、長期的な収益性を考えるうえで重要です。


コメント