大型商業施設やホテル、病院、オフィスビルなどで「コージェネレーションシステム」という言葉を聞いたことはありませんか?
「発電設備なのは分かるけれど、普通の非常用発電機と何が違うの?」
「なぜ大型施設ではガスを使って発電するの?」
そう疑問に思う方も多いかもしれません。
実はガスコージェネレーションシステムは、電気をつくるだけではなく、そのときに発生する熱も有効利用するという特徴があります。
さらに、停電などの非常時に電力供給を継続できる設備として、BCP(事業継続計画)や災害対策の面からも注目されています。
今回は、ガスコージェネレーションシステムの仕組みから、大型商業施設などで採用される理由、そして災害時の役割まで分かりやすく解説します。
ガスコージェネレーションシステムとは?
まず「コージェネレーション」という言葉から説明しましょう。
コージェネレーション(Cogeneration)とは、
1つのエネルギーから「電気」と「熱」を同時につくり、有効利用するシステム
のことです。
一般的な発電所では、燃料を使って電気をつくります。
しかし発電の際には大量の熱が発生します。
通常の発電では、この熱の多くが利用されないまま失われてしまいます。
そこで、その熱を捨てずに、
- 空調
- 給湯
- 蒸気
- 温水
などに利用するのがコージェネレーションです。
資源エネルギー庁も、天然ガス、石油、LPガスなどを燃料として発電し、その際に発生する排熱を同時に回収する「熱電併給システム」と説明しています。
仕組みは意外とシンプル
イメージすると、次のようになります。
ガス
↓
ガスエンジンなどで発電
↓
電気を施設内で利用
同時に、
発電時に発生する熱
↓
給湯・空調などに利用
つまり、
「電気をつくったときに出る熱も捨てない」
というのがコージェネレーションの最大の特徴です。
これが普通の発電設備との大きな違いです。
なぜ「大型施設」と相性がいいのか?
では、なぜ大型商業施設やホテル、病院などでコージェネレーションが採用されるのでしょうか?
大きな理由の一つが、
電気と熱の両方を大量に使うから
です。
例えば大型商業施設では、
- 照明
- エレベーター
- 空調
- 冷蔵・冷凍設備
- 厨房
- 給湯
- 店舗設備
など、多くのエネルギーを使用します。
つまり、
「電気も必要」
「熱も必要」
という施設です。
こうした施設では、発電時に発生した熱を空調や給湯などに利用できるコージェネレーションとの相性が良くなります。
普通の発電機と何が違う?
ここも重要なポイントです。
一般的な非常用発電機は、
燃料 → 発電 → 電気
という使い方が基本です。
一方、コージェネレーションでは、
燃料 → 発電 → 電気
に加えて、
発電時に発生する熱 → 給湯・空調など
として利用します。
つまり、燃料から得られるエネルギーをできるだけ無駄なく使おうという考え方です。
資源エネルギー庁の資料では、コージェネレーションの総合効率について75~80%という例が示されています。
もちろん、実際の効率は設備の種類や運転条件、熱の利用方法などによって変わります。
コージェネレーションの大きなメリット①「省エネ」
コージェネレーションの最大のメリットの一つが、エネルギーを効率よく利用できることです。
通常、遠くの発電所でつくられた電気を送電すると、送電の過程でもエネルギーのロスが発生します。
一方、コージェネレーションは、
電気を使う場所の近くで発電する
という特徴があります。
さらに、発電時に発生する熱も施設内で利用します。
そのため、
「つくったエネルギーを、その場でできるだけ使う」
という効率的なエネルギー利用が可能になります。
メリット②「電力ピークを抑えられる」
大型施設では、夏場などに空調設備が大量の電力を使用します。
電力需要が一気に高くなると、施設にとっても電力コストや電力確保が課題になります。
コージェネレーションを施設内で稼働させることで、自ら電力をつくることができます。
さらに排熱を空調などに利用することで、電力需要を抑えることにもつながります。
資源エネルギー庁も、コージェネレーションについて、ピーク時の需要を抑える「ピークカット」に役立つとしています。
メリット③「災害時の電源」として期待される
そして、今回の「地震とLPガス事故」というテーマで特に注目したいのがここです。
コージェネレーションは、災害時のエネルギー供給を支える設備として活用できる場合があります。
停電対応型のコージェネレーションでは、停電時にも発電を継続できるよう設計された設備があります。
資源エネルギー庁も、停電対応型コージェネについて、停電時でも電力・熱を供給できる分散型エネルギーシステムとして、レジリエンス強化に役立つとしています。
つまり、
平常時
電気をつくる
+
排熱を空調・給湯などに利用
↓
非常時
停電しても、対応した設備で発電を継続
+
必要な電力・熱を確保
という使い方ができるわけです。
「停電したらコージェネも止まる」のでは?
ここで注意したいのが、
コージェネなら必ず停電時にも動くわけではない
ということです。
これは非常に重要です。
コージェネレーションにはさまざまなタイプがあり、停電時に運転を継続できるかどうかは、設備の仕様や電力系統との接続、非常時の運転機能などによって異なります。
そのため、
「コージェネがある=停電しても必ず電気が使える」
と考えるのは正しくありません。
非常時の電力供給を目的とする場合には、停電対応機能やブラックアウト時の起動方式、燃料供給、重要負荷への電力供給などを含めた設計が重要になります。
大型商業施設でコージェネが注目される理由
大型商業施設の場合、災害時にも、
- 防災設備
- 消防設備
- 照明
- 通信設備
- エレベーター
- 冷蔵・冷凍設備
- 空調
- 給水・給湯設備
など、電力が必要となる設備があります。
すべてを通常時と同じように動かすのではなく、
「災害時に最低限必要な設備へ電力を供給する」
という考え方が重要です。
これがBCP(事業継続計画)の考え方です。
資源エネルギー庁も、コージェネレーションについて、非常時のエネルギー供給確保やBCPへの活用を意義の一つとして挙げています。
イオンなどの大型商業施設との相性
大型商業施設では、
「大量の電気を使う」
だけではありません。
空調や給湯など、
「熱を大量に使う」
という特徴があります。
そのため、
電気+熱
を同時に利用できるコージェネレーションは、大型施設との相性が良いシステムです。
また、大型施設は災害時に地域住民が一時的に避難する場所となったり、地域の生活インフラとしての役割を期待されたりするケースもあります。
そのため、単なる省エネ設備ではなく、
「災害時にもエネルギーを確保するための設備」
という視点からも重要性が高まっています。
LPガスでもコージェネレーションはできる?
できます。
コージェネレーションは「都市ガス専用」というわけではありません。
資源エネルギー庁の資料でも、コージェネレーションの燃料として天然ガス、石油、LPガスなどが挙げられています。
そのため、LPガスを利用したコージェネレーションも存在します。
LPガスはボンベやバルク貯槽などで施設に供給できるため、導管網に依存しない分散型エネルギーとして活用できる点も特徴です。
ただし、災害時にどこまで運転を継続できるかは、
- LPガスの備蓄量
- 容器・バルク貯槽の状況
- ガス配管
- 発電設備
- 電気設備
- 遮断装置
- 非常時の運転方式
など、システム全体で考える必要があります。
ここでも「遮断弁」が重要になる
ここまでの記事で「LPガスの遮断弁」について紹介しました。
コージェネレーションもガスを燃料として使用する以上、
「災害時に安全に停止できる仕組み」
が重要になります。
例えば、
地震などの異常を検知
↓
ガス供給を遮断
↓
燃焼設備を安全に停止
という安全側への制御が必要になります。
一方で、停電時に継続運転させる必要がある設備については、
「安全を確保しながら、必要な電力を供給する」
という高度な制御が必要になります。
つまり、災害に強いエネルギーシステムをつくるためには、
「発電できること」だけでは不十分
なのです。
発電設備+ガス設備+遮断設備+電気設備+制御システム
を一体として考えることが重要です。
コージェネレーションは「災害に強い魔法の設備」ではない
ここも誤解してはいけないポイントです。
コージェネレーションが設置されているからといって、
「どんな災害でも電気が使える」
わけではありません。
例えば、
- ガス供給設備が損傷する
- ガスが安全のため遮断される
- 発電設備が損傷する
- 電気設備が損傷する
- 燃料が不足する
- 建物そのものが被災する
など、さまざまなリスクがあります。
だからこそ、災害対策では、
「一つの設備にすべてを依存しない」
という考え方が重要です。
コージェネレーション、非常用発電機、太陽光発電、蓄電池などを組み合わせることで、より強いエネルギーシステムを構築することができます。
実際に災害時に活用された事例もある
コージェネレーションの災害時活用は、単なる理論ではありません。
資源エネルギー庁の資料では、2018年の北海道胆振東部地震で北海道全域が停電した際、札幌市の「さっぽろ創世スクエア」でコージェネレーションによる電力・熱の供給が継続した事例が紹介されています。
また、千葉県睦沢町の「むつざわウェルネスタウン」では、天然ガスコージェネレーション、太陽光発電、系統電力などを組み合わせたエネルギー供給が行われ、大規模停電時の電力供給事例も紹介されています。
このように、コージェネレーションは、
「普段は省エネ」
そして、
「災害時にはエネルギーのレジリエンス向上」
という2つの役割を持つことができます。
コージェネレーションが大型施設で選ばれる5つの理由
ここまでを整理すると、大型施設でコージェネレーションが採用される理由は大きく5つあります。
① 電気と熱を同時に利用できる
発電時に発生する熱を空調や給湯などに利用できます。
② エネルギーを効率よく利用できる
発電時に発生する排熱を捨てずに利用することで、総合的なエネルギー効率を高められます。
③ 施設内で発電できる
電力需要のある場所の近くで発電できるため、分散型エネルギーとして活用できます。
④ 電力ピークを抑えられる
施設内で発電することに加え、排熱を空調などに利用することで電力需要のピークを抑えることができます。
⑤ BCP・災害対策になる
停電対応型の設備であれば、非常時の電力・熱供給を支えることができます。
LPガス業界から見ても重要な設備
LPガスを扱う私たちにとって、コージェネレーションは非常に興味深い設備です。
これまでLPガスというと、
「家庭のコンロや給湯器に使うガス」
というイメージが強かったかもしれません。
しかし現在では、
発電
空調
給湯
非常用電源
など、LPガスの利用方法は広がっています。
特に災害が多い日本では、
「普段から使える」
だけではなく、
「災害時にも役立つエネルギー」
という視点がますます重要になっています。
まとめ|コージェネレーションは「電気をつくる設備」だけではない
ガスコージェネレーションシステムとは、
ガスなどを燃料として発電し、そのときに発生する熱も空調や給湯などに利用する熱電併給システム
です。
大型施設で採用される大きな理由は、
電気と熱を大量に使う施設だからこそ、コージェネレーションのメリットを活かしやすい
ということです。
さらに、停電対応型のコージェネレーションであれば、災害時の電力・熱供給を支える設備としても活用できます。
ただし、
「コージェネがあれば絶対に停電しない」
ということではありません。
ガス供給、発電設備、電気設備、遮断装置、制御システムなどを含めた総合的な設計が重要です。
前回の記事で紹介した「LPガスの遮断弁」も、こうした大型施設のガス設備を安全に運用するうえで重要な役割を果たします。
これからのエネルギー設備では、
省エネ
+
経済性
+
災害への強さ
この3つを同時に考えることが、ますます重要になっていくのではないでしょうか。


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